一般財団法人日本伝統織物研究所設立趣旨
開催
急激な産業技術の進歩や人々の生活様式の変化など社会情勢を取り巻く様々な要因が重なって、我国に古来から伝えられてきた伝統的な技術や技法が消えようとしています。
古都京都に於いて500年以上営々と築き上げられてきた我国最大の伝統的な織物産地である「西陣」に於いても、打ち続く不況や人々の和装離れなどにより、製織技術や技法をはじめ、機装置や道具類などの関連技術までが今急速に衰退し、滅亡一歩手前といっても過言ではない程の危機的な状況に陥っています。このたびの大震災により私達の生活文化の有様が根底から問われている現在、古代から自然を愛
特に、1300年の歴史を有し、世界で最も美しいといわれる手織の「錦」即ち伝統的先染紋織物の伝承技術や、それを荷なう職人達の技術、技法がろうそくの火が消えるように消えていっている現状は放置出来ません。何故なら和装をはじめ茶道や能、歌舞伎など我国の伝統文化を根底から支え、また「機械」という言葉がそこから生まれ出た起源であり、元々経糸を上げるか下げるか、緯糸を越すか越さないかの0か1かの世界で、コンピューターの原点でもあり、自動車産業をはじめとする近代のハイテク産業を生み出してきた母胎であるからです。これらの技術、技法の手本が無くなることは将来のあるべき生活文化や生産技術の進歩に大きな弊害となることも予測されます。伝承技術の保存継承については、単に経済的な問題のみならず、まさに技術の伝承の問題であることが強調されなくてはなりません。このためこれらの伝承技術に携わっている方々や、今後も継承していただく立場の方々には実際に仕事を通じて実践していただくことが大事であります。
昔から「手に勝る機械は無し」と言われているように、伝統技術、技法を末永く保存、伝承するために、本財団は
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本財団では、「綜合的復元事業」の成果やその「ものづくり」の現場を公開し、情報発信することで、これらの伝承技術の保存育成の重要性を多くの人々に広く認識していただくための啓発活動を行い、同様の問題を抱える各国との国際交流をすすめ、未来の技術革新への遺産として21世紀の生活文化に大きく貢献するものであります。本財団の設立趣旨を御理解いただき、御協力賜りますよう切にお願い申し上げます。
平成23年7月吉日
一般財団法人 日本伝統織物研究所